新しい歴史が生まれる121日
伝説的なプラニッツァでのワールドカップ最終戦から235日が経った。この235日間、スキージャンプ・ワールドカップ(W杯)史上最高のスペクタクルとなったこのファイナルは語り草だった。
235日前からセヴェリン・フロインド(独)はW杯総合勝者を名乗ることが許されている。この235日間、ペーター・プレウツ(スロベニア)は同点だったのに総合2位だ。235日前ノルウェーチームは、ドイツにわずか37点足らずネイションズカップを逃した。
それら全ても、もうすぐ過ぎた歴史となる。
ドイツ・クリンゲンタールにて、スキージャンプ・ワールドカップシーズン2015/16が始まる。現チャンピオンのセヴェリン・フロインドは追われる身となる。
息つく暇なし
既に明らかなのは、クリンゲンタールでのW杯開幕戦予選からプラニッツァでの大ファイナルまでの121日間、息つく暇もないということだ。個人戦31試合、団体戦6試合が予定されている上、スキーフライング世界選手権も開催される。統計的に見ると、3日毎に1試合行われることになる。
フォクトランド・アレーナで幕を切る最初のジャンプへの期待は高まる。
夏の間、トップ・アスリート達はあまり観衆の前に姿を表さなかったが、その代わり他の選手が台頭してきた。
一番顕著だったのは作山憲斗で、予期せぬ活躍でFISグランプリで総合優勝を果たした。作山が冬季にもこの実績をつなげていけるかはこれからの見どころだ。
ダヴィド・クバツキー(ポーランド)も同じく注目を集め、チームメイトのカミル・シュトッホに迫りたいところだ。ロベルト・クラニエツ(スロベニア)も同チームの「ベテラン」同士の戦いでイェルネイ・ダムヤンに一歩先んじることができ、やっとまた喜ぶ理由を持てた。
ケネス・ガグネスはどうやらノルウェー・チームに落ち着いたようで、ワールドカップ出場権を確保できることだろう。
既に好調のフロインド
しかし、冬季の見出しには恐らく違う選手があがってくるだろう。セヴェリン・フロインドは数回参戦したグランプリで、そして何よりドイツ選手権で好調さをみせつけた。どちらにしても、この世界チャンピオンにとって自信不足は無縁だろう。
ペーター・プレウツはかなり熱くなっているはずだ。色々言われてはいるが、プラニッツァの最終戦はスロベニア勢に爪痕を残さなかったわけがなく、モチベーションの度合いはこれまでに無いほど高くなっているはずだ。それに加え、スロベニアはユーリ・テペシュという熱い鉄を火に投げ込んでくる。そしてプレウツ兄弟の末の弟、ドーメンもクリンゲンタールの初戦からW杯初参戦してくる。
昨シーズン総合3位のシュテファン・クラフトは、オーストリア・チーム首位の座をむざむざと引き渡したりしないだろう。
いくらグレゴア・シュリレンツァウアーがグランプリ・ヒンツェンバッハ大会で優勝し、彼の黄金時代を彷彿とさせたいっても、この冬の隠れた候補というところだろう。
若手ノルウェー勢が狙ってくる
若手ノルウェーの一人がW杯総合優勝争いに入ってくるかも注目したい。ヴェルタ、ファンネメル、タンデ、フォアファング、スティエルネン、そしてガグネスは全ての試合で表彰台を狙えるため、団体戦ではかなりの強豪となる。
日本勢がどこまで来るかも楽しみだ。葛西紀明は既にかけがえのない存在だ。しかし、43歳の葛西の後には竹内択、作山、伊東大貴が世代交代の準備している。
ポーランド・チームは今季もカミル・シュトッホがダントツだろう。ダヴィド・クバツキーとピョトル・ジーラも上位に入ってくる可能性がある。そして、いつ元ジュニア世界選手権王者のヤクブ・ヴォルニーが膝の怪我から復帰して万全のフォームで臨んでくるかも注目される。
完璧なジャンプを追求するアマン
そして、もちろんシモン・アマン(スイス)も忘れてはならない。アマンはシーズン開始前から既に備えて、高すぎる期待に警戒している。34歳のアマンは、引き続き完璧なジャンプを模索しており、それを是非ともジャンプ週間で見せたいところだ。アマンがW杯参戦18年目にして、本当にオーバストドルフとビショフスホーフェンの間で成功すれば、スキージャンプ仲間で喜ばない者はいないだろう。
熱い3週間
ジャンプ週間と言えば、もう45日後には始まってしまう。オーバーストドルフでの予選の17日後には、選手達はスキーフライング世界選手権の予選でクルムのフライングヒルに立つことになる。ジャンプ週間と世界選手権の間にはW杯ヴィリンゲン大会もある。この期間が今季の一番熱い3週間となることだろう。
この冬、121日の間に新しいヒーローが見出される。そして次のシーズンまで語られる豊富な話題を提供してくれるだろう。